第1章 くもり所により快晴
「はぁ…やっぱりあれは気のせいだったのかな…」
結局、あれから一度も新開先輩はこっちを見てくれなくて。あの一瞬目があったのは何だったのだろうと溜め息をつきながら思わず頭を抱える。
「君、大丈夫か…?」
「へ?あ、すみません大丈夫です!」
「む、君は先日の…!」
いきなり頭上から声をかけられてビクッとして顔を上げるとそこには東堂先輩がいて。
「わああ!東堂先輩!どうされました!?」
「ほう、オレのことを知っていてくれているのだな!なんて罪深い男なのだ…仕方ないな箱学イチの美形はこの山神だからな!」
思いがけない人物に大きな声を出してしまい慌てて口を手で塞ぐ。
忘れてた…ここは図書室。私は図書委員の当番でカウンターに居たんだった…
髪を掻きあげてカッコつけている東堂先輩の声も大きくて、慌てて東堂先輩に向けてしーっと唇に指を当てると静かにしなければならないことが伝わったのか、すまないと謝ってくれたので小さく首を振って。
「私こそすみません。まあ、この時間帯誰も居ないので大丈夫なんですが…あ、その本借りられますか?」
「ああ、お願いしたい」
「わかりました!少しお待ち下さいね」
東堂先輩が本を数冊持っていることに気付いて、貸し出し処理をする。
「そういえば、君は先日隼人の応援に来てくれていた子だろう?」
「え?あ、はい!私、新開先輩のファンクラブに入ってるんですよ」
「隼人のファンクラブか…」
「まあ、全く相手にはされてないんですけど!東堂先輩のファンクラブが羨ましいくらいです」
「アイツは昔からな…む、オレのファンクラブが?ワッハッハー!そうだろう!オレはファンサは怠らないからな!」
先日、私が新開先輩の応援に行っていたことを知っていてくれていたことに驚きつつも、高笑いをして自慢気にしている東堂先輩に思わず笑ってしまった。