第3章 第一夜
「痛てて・・・・っ??」
(・・・あ、あれ?痛く、ない?)
──受け身なしで顔から倒れたはずなのに。
一向にやってこない痛みの正体を知るべく、恐る恐る下を触るとどうやら乱雑に置かれたシーツのようなものがクッションの代わりをしてくれたらしい。
すれば、一体何に躓いたのだろうか。
カヲルは頭に疑問符を浮かべたまま、足元へ慎重に手を伸ばしていく。
そして、指先は骨ばった柔らかい何かの感触を捉えた。
(な、なんだかほんのり温かい?)
少し位置をずらして触れば、それは人の姿を模したような形をしていることが分かる。
「もしや、これって・・・・・刀剣?」
温かみはあるものの、神力をほとんど感じられず、本当に生きているのかすら怪しいところだ。
「きみ、君──!大丈夫かい!」
揺すってみても反応はなし。
手探りで漸く見つけた顔に耳を近付けると微かに息はあり、安堵の息が漏れる。
しかしながら、暗闇の中ではこれ以上 刀剣の状態を確認することは難しかった。
まして、ここまで消耗しきっている神力を早く補わなければ消えてしまう可能性もある。
身体に拒絶されれば、刀剣を苦しめる形になると分かっていても弱りきっている刀剣を見過ごせるほど、カヲルも人でなしではない。
「仕方ないですね。荒療治ですが迷っている時間はありません・・・」
そう言うとカヲルは刀剣の顔を両の手で支え、躊躇いなくその唇に口づけた。
────
躓いた(つまずいた)
時間(ひま)
躊躇い(ためらい)