第3章 第一夜
(こんな奥に。とんだ酔狂も居たものです・・・)
建物に一歩、また一歩と近付くにつれて肌にピリピリとした感覚が走り、扉に辿り着く頃には頬に軽い切傷が出来ていた。
周囲に視線を走らせるも、札や呪術符のようなものはなく、眉間に深い皺を刻む。
(これは、少々厄介な術が施されていますね)
封印術に呪縛呪文を二重にかけている当たり、大層執着していたことが見てとれる。
「でも、私には通用しません──! " 解 "」
バリンと何かがひび割れる音と共に、扉を中心に激しい稲妻が辺りを駆け巡っていく。
力に耐えきれなかった蝶番は弾け飛び、押さえを無くした扉が力なく地面に倒れた。
「ふぅ、いっちょ上がりです」
扉を失った蔵から立ち込める埃と湿気に混じって漂う発酵臭が鼻腔を掠め、思わず目を細める。
窓1つない蔵内部は天井近くの換気口から差し込む薄明かりのほか、蝋燭等の灯りらしきものは見当たらず、手探りで前に進むしか方法はなかった。
こんなとき、現世のゲームのような光魔法が使えたらとつくづく思う。ただ1つ確かなのは、奥に進むにつれて臭いが強くなっていることだけだ。
したがって、手元ばかりに意識を取られていたカヲルは、足元に落ちているナニかに気づくのが遅れ、気が付くと倒れ込んでしまっていた。
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酔狂(すいきょう)
蝶番(ちょうつがい)