第3章 第一夜
「この本丸、些か広すぎやしないか・・・な」
敷地の約半分程度を探索し終えた所でとうとう足の動きが止まった。
結界の中を数時間歩いていたのに加え、元々体力に自信のある方ではないカヲルの身体はあっさりと根を上げてしまったのだ。
何千年と生きていても、増えるのは知識ばかりだと我ながら自分の体力の無さに情けなくなる。
しかし、それと引き換えに得られたものはそれなりに大きかった。
1つは地盤沈下によって、本丸が傾き 要である支柱に幾つもヒビが入っていたこと。
長らく審神者不在で霊力が枯渇している上に、刀剣の神力も落ちている今、姿形を維持できているだけでも凄いことだ。
(本来、審神者の霊力を源にして維持するものを刀剣達が陰の力を利用して何とか持たせている・・・といった所か──)
陰の力は同時に闇落ちを示唆する為、悲しい現実に心が痛む。一刻も早く刀剣を見つけ出す必要があるのだが。
「一向に刀剣の気配を感じないのは、何故でしょう・・・」
政人から貰った資料によれば、この本丸には約60振りの刀剣がいると記されていた。
けれども、これだけ見回ったにも関わらず未だに神力1つ感じとれていない。分霊とはいえ、本霊の巫女であるカヲルが彼らの神気を感じとれない等、由々しき事態である。
広い本丸と言えど、ここまでカヲルの神気レーダーが反応しないことは今までの案件の中で無かっただけに、若干焦りの色を隠せない。
(それもこれも、あの仕掛けが何か関連しているのですかね・・・)
仕掛けとは、カヲルが先刻発見して破壊した積み石のことだ。簡易的な結界が施されているだけの代物だったが、目眩ましには十分な力を持っていた。
その他にも、数ヶ所にそれとは違う呪術を施した痕が残っており、何か隠されていることは間違いないだろう。
(ただ、気掛かりなのは積み石に残っていた微量な・・・・)
「あ・・・」
思わず声を上げた先にあったのは、蔦の生い茂った蔵だった。人目から隠すように建っているそれは、煉瓦造りで他の蔵に比べるとまだ新しそうだ。
────
目眩まし(めくらまし)