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訳有り審神者と刀剣の事情・・・

第3章 第一夜




(不味い、このままでは・・・ん?)




ほんの一瞬──。



下手すれば見落としてしまうような藪の枝奥に何かが引っ掛かっているのが見えた気がした。

大の大人が素手を入れるには些か狭いが、この際 気にしている余裕はない。

躊躇いなく腕を突っ込んでゴミ箱を漁るような感覚で枝と枝の間を探していく。



──多分このあたり・・・っ、あった!



引っ張り出すと、それはお世辞にも綺麗とは言い難い古びた御守りだった。位置からして小夜左文字の落とし物だろうか・・。

何はともあれ、これで本丸との繋がりを見つけられたカヲルは素早く袂から呪符を取り出し、御守りの上に右手で印を組んでかざした。


「我が声に応え、かの持ち主の元へ導け 急急如律令っ」

呪いを唱えると符は蝶の形に姿を変え、ヒラヒラと何処かを目指して動き出す。暫く険しい山道を進むとカヲルの眼前に真っ二つに割れた巨大な樹木が姿を現した。

蝶はその割れ目の上で数回螺旋を描くようにして消え、どうやら此処がお目当ての場所らしい。
目を凝らし、注意深く割れ目の中央を見遣った。すると、ほんの一瞬ではあるが時空に歪みが生じたのをカヲルは見逃さなかった。


(ふむ、巧妙に仕掛けているな。しかし、私も伊達にブラック本丸を改心させてきた訳ではない──)


勢いよく鞘より右手の刀印を抜き、呪いを口ずさみながら九字を切っていく。



「破────っ」




放たれた覇気に結界は弾け飛ぶように散り散りになると、禍禍しい霧が途切れて建物らしき影が垣間見える。
それは次第にハッキリとした形を帯び、カヲルの瞳を驚愕の色に染め上げた。

ほぼ崩壊した正門に、そこから見える本丸はまるで廃墟同然。

あちこちに散乱する瓦礫に加えて、所々崩れ落ちた漆喰の残骸には生々しい血の跡が飛び散っている。


(連絡が途絶えて1年でここまでとは•••)



「・・・なかなか骨が折れそうですね」



しかし、これはまだ悪夢の序章に過ぎないことをカヲルはまだ知る由もなかった。


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袂(たまと)
些か(いささか)
呪い(まじない)
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