第3章 第一夜
鯰尾達に反省するよう命じると青江が薬研の見やすい位置に刀を降ろした。程よい反りに波打った美しい刃文、鎬地には見事な昇り龍の彫刻が施されており、これまで実装されてきた刀とは少しばかり格が違う。青江が恍惚混じりの溜め息を溢す気持ちが分からなくもないが、薬研だけは違う意味で困惑していた。
どうしてか、初めて見る気がしないのだ。でも、刀の名前を知っているかと言われるとそうではない。
(何故だ・・・・何故俺はこの刀を知っている気がする)
そして、鞘のある一点が目に入った瞬間、記憶の奥底に眠っていた情景の欠片が弾けた。
"「なぁ、 。その下緒・・・」"
"「あぁ、これは信長が──・・・」"
薬「 おいっ!この刀はそこの審神者の持ち物なんだよな?!」
今「そ、そうですよ、ぼくがきたのとどうじにてについてたヒモからでてきました」
急に声を荒げた薬研に今剣は、体を強張らせる。
それは周囲の刀剣達も同様で、薬研の変わりぶりに驚きを隠せないでいた。
薬「まだ、辛うじて息はあるな。この審神者は俺っちが預かる・・・その刀も」
普段、審神者に対して自分達以上に冷酷非道な彼が刀1つに狼狽えている。まして、持ち主である人間の安否を心配していることが信じられなかった。
何か言いたげな三人を他所に薬研は無言で刀を鞘に収め、丁寧に土埃を払って人間を薬品庫に運ぶよう青江に指示を出した。
~+~+~+~+~
薬品庫の薄汚れた簡易布団に審神者を降ろしてもらい、軽く礼を言って刀台に刀を置く。
薬研は相も変わらず、形容できない複雑な表情を浮かべ、気まずい空気が流れる。
に「・・・清めるための水と布を持ってくるよ。薬研は自分の準備進めておいてくれ」
薬「 あ、あぁ。悪いな、頼むよ」
破れた障子戸がピシャリと閉じて、足音が遠退いていく。
きっと聞きたいことは山ほどあっただろう。
それでも、俺の気持ちを汲んで何も聞かずにいてくれる青江がこの時ばかりは有り難く感じた。
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鎬地(しのぎじ
恍惚(こうこつ
溢す(こぼす