第1章 ここは私の世界じゃない
その後、事情を説明されたらしく1人ずつ…正確にはローが横についた状態で自己紹介をされた朱里。ペンギンと書かれた帽子を被っている人間がペンギンという名前を知った時の顔に、ペンギンは懐かしいような悲しいような顔をして笑っていた。サングラスをかけた人間はシャチといい、記憶がなくなったならまた1から関係築けばいいだけだろと笑いながらもどこか寂しそうだった。ベポというシロクマに至っては隠す事なく泣きながら俺達の事忘れちゃったの?と問いかけてきた。その瞬間ローが睨みベポは落ち込みながらも朱里に謝った。
「とりあえず、暫くは落ち着くまでここで寝ろ。部屋は用意してやる」
「あ、ここって家だったんですか?てっきり病院かと…」
「あぁ、まずそこからか…」
3人と話を終えた後、ローが部屋に残り今後の話をすると言った。そしてローは面倒臭いのか溜息を吐きながら朱里の疑問に答え、今の状況を説明していく。
「俺達がいるのは船だ。今は航海中で、ここは海の上。そして…俺達は海賊だ」
その言葉に朱里はまた頭が痛むような気がした。ローはなんと言った?船?航海?海?…海賊?
「か、海賊って…え、まさかあの…お宝探したり、略奪したり…人、を…殺し、た…り…」
言いながらローの顔を見ていて、朱里は気付く。当たり前の事を本当に知らないんだな、と言わんばかりの顔を見て朱里は自分はなんという場所にいるのかと恐怖に襲われる。まさか、自分は海賊にさらわれていたのか?
「俺達は、海賊だ。お宝を目指して略奪も人殺しも、躊躇っていたら死ぬ。仲間の為に、目的の為に…俺達は手段は選ばねぇ」
真っ直ぐ見つめられた言葉の中に含まれた想い。それに今の朱里が気付く事は無い。ただ、そんな場所に何故自分はいるのかと朱里は怯えるだけだった。
「…後で本を持ってきてやる。新聞もな。お前は頭は悪くないし、難しい言葉はともかく…何となくは分かるだろ」
そう言って、またローは朱里の頭を優しく撫でていく。まるで癖かのように自然とされたそれに、朱里は怯えて身をすくめた。