第4章 変わった世界
朱里は笑う、嬉しそうに笑う。ローは複雑だった。今の気分は浮気した気分だ。それでも戻ってきた嬉しさと、消えてないであろう記憶に喜んだ。
「朱里…全部、分かってるのか?」
「んー…ちょっとそれは確認が必要だけど…多分、知ってるよ。私だけど、私じゃない…けど、朱里の記憶」
こんな幸せな事があるのだろうか。これから先、ローは命の恩人の仇を討つという目的があるというのに。それでもローは、今なら死んでも良いと思える程に幸せだった。
「朱里…好きだ…愛してる…ありがとう」
そう言ってキスをすれば、朱里は嬉しそうに笑った。
「愛してるよ、ロー。朱里を愛してくれて、ありがとう」
そして、1度ローから離れて朱里は再び自分の姿を見ながら記憶喪失の間の感想を述べだした。
「しかし、不思議な感覚だなぁ…なんかさ、なんて言うの?滅茶苦茶リアルなドラマとか見た気分というか…」
「『どらま』?」
「あー…演劇見た気分?」
「どんな気分だ」
「んんー…なんかね、その間の朱里が思ってた事もしっかり分かるんだけど…私の過去の記憶として受け入れるってよりは第三者としてその感情も整理しちゃうというかなんというか…私に説明させるとか無理でしょ」
「待て、諦めるな頑張れ」
その後も朱里に何とか単語で良いから説明しろと言った結果をローが整理して分かったのは、逆行性健忘症になっている間の記憶はあってもそれは今の朱里からすれば自分と理解していても自分の物とは思えないらしい。ロー達が言った言葉に対してどんな感情かも分かるし共感出来るが、今の朱里からすればそれは自分に言われた言葉ではないと思っているらしい。
「私じゃない朱里の怖がってた忘れる事は無いし、わざわざ日記残す必要もなかったんだけどなぁ…日記書くぐらいなら写真もっと残せば良かったのに。でもまぁ、生きた証が少しでも増えるなら日記のが良かったのかな」
「…日記?」
「うん?日記がどうしたの?」
「お前が言い出したんだろ」
「ん?…あぁ、まだ見てないの?」
「どういう事かちゃんと説明しろ!」
ローは少し思う。今の朱里の方がマイペースさは酷いと…。