第4章 変わった世界
痛みは無くなったのか、朱里は穏やかな顔で眠っていた。
あんなにも戻って来て欲しかった朱里が起きてくれるかもしれないのに、ローは起きた朱里がまだだったねなんて笑うのを想像した。
どうしていれば良かっただろうか。こんなにも突然別れの日が来るのなら今日は1日傍にいれば良かったと後悔した。写真だってあんなギリギリではなく、今日1日を使って沢山撮れば良かった。あの時言いかけた言葉は何だったのかと問い詰めれば良かった。本当に、幸せだったのかどうか。聞けば良かった。
それからもローが1人考え込んで後悔をしている間に、朱里は目を覚ました。
「ぅ…ん…んんー…?」
「………朱里…大丈夫か?…俺の事、分かるか?」
朱里の声を聞き、ローは期待なのか不安なのか自分でも分からない感情で問いかけた。
「んぁー…?何言ってんの、馬鹿?…んん〜…うん、うん…あー…頭グルグルするなぁ、もう…」
「はっ、いつも通りみたいで何よりだ…」
数年間見てきた朱里の反応だった。戻ってきた嬉しさと、もうあの朱里はいないという寂しさで眉を顰めながら笑うと、朱里はあからさまに不機嫌だと言う顔を作って、先程のローの想像よりも上の言葉を発した。
「なーにが何よりだ、よ。…浮気として認識して、修羅場でも起きたら皆どんな反応するだろうね」
ニヤリと笑ってそう言う朱里に、何の奇跡が起きたのかと目を丸くして見つめるロー。朱里はまるで全ての事情を分かってるかのように続けた。
「そりゃあね、記憶喪失とはいえ同じ性格なら好きになるのも分かってあげても良いけどさぁ…あんなに惜しんじゃうなんて、これはもう浮気だね」
そして、朱里は身体を起こして自分の服装を確認する。うんうん、と頷いてベッドから降りるとローを抱き締めた。
「まぁ、許してあげようかな。私は私だもんね」
どういう事だ、と聞こうとしても上手く声が出ずに朱里を抱き締め返すロー。朱里はというと、楽しそうに笑いながらローの頭を撫でる。
「いやぁ、しかし…こんなローが見れるならまた記憶喪失も良いかもね」
「っ、馬鹿か…こんな思い、二度とゴメンだ…」