第3章 新しい日々
この世界に来た朱里が、今いる朱里の生まれ変わりだとして。ローとの関係が進むのに対して何故か疑心を持っていた。何故?記憶を持っているのなら、今の朱里なら既に結ばれる事は知っているから疑心を持つ必要はない。
「あはは、モヤモヤしたの、そういう事か…」
知っていたのなら、信用したら秘密を教えるだなんて言わなくて良い。知っていたのなら、ロー達に悲しい想いをさせないように事前に言えば良い。でも、この世界の朱里は知らない。
「どういう事なの…?皆の事、こんなにも好きになったのに…私は忘れるの?皆が、私に言ってくれた言葉も忘れちゃうの?嫌だ、そんなの嫌だ!い、やっ、ん…!」
泣きながら叫び、パニックのようになる朱里。折角無理矢理納得したのに。前を向こうとしたのに。待ち受けてるのは全てが無駄になる未来。そんなのは耐えられない。そんな未来が来るのなら、何故神様はこんな目に合わせるのか。そんな朱里の気持ちを受け止めようとしたのか、ローは朱里にキスをした。
「っ、ふ…な、に…?」
「落ち着け、朱里」
「落ち着けって…でも、だって、こんなの…!」
「落ち着け!…大丈夫だ…大丈夫。お前が忘れても、俺が忘れねぇ…絶対に、覚えててやる!お前が思った事、感じた事!全部覚えて、この世界の朱里に伝えてやる!お前が、どんだけ苦しんだかも…全部…受け止めてやるから」
きっとローも解決策なんか浮かんではいない。今朱里に伝えている言葉は全て慰めだ。ただ、朱里の忘れる事への恐怖に対して朱里が忘れないようにと安易な慰めではなかった。
「うっ…ぁ…やだぁ…私…私が、忘れたくないぃ…私が、あんなにも酷い事言ったのに…皆、私の為に、言ってくれたのに…私は、それを全部忘れちゃうなんて…嫌だよぉ…」
元々は、この世界にいた朱里との繋がりがあったからではある。今ならその朱里も今ここにいる朱里も変わりないとは分かっている。ただ、今ここにいる朱里を気にかけて言葉にした数々はこの世界にいた朱里では貰えなかった物だから。
「嫌だぁあ…!」
こんな悲しい思いの為だけに聞いた言葉かと思うと、悔しくて堪らなかった。