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私の世界

第3章 新しい日々




走りながら朱里は考えていた。やっとこの世界を楽しく思えてきたのに。日本に戻れても、楽しかったと言えるように過ごそうと思っていたのに。だからこそローの想いを避けた。楽しかったで終わらす為にも。仲良くしても、良い思い出と言えるように。出会いがどうにか早ければ、自分がこんな格好良い人と幸せな時間を育めたかもしれない。けれどもいつか消えるのなら、そんな恐怖と戦って恋をするぐらいならと。


「わ、朱里、どうたしの!?」
「ごめんベポ!」


途中でベポにぶつかり、涙が出そうになる。思い出があれば耐えれる。だから前向きにと考えた。けれども、もしかしたら…。


ローの部屋を乱暴に開けるとそこにはローがいた。鍵付きの日記帳を持って。


「っ…はぁ…はぁ…」
「…その様子だと、お前も気付いたのか」
「何て…書いてあるの…!」
「………見ろ」


奪うように日記帳を取り、最初のページを捲る。そこには忘れない内にと必死に書いたのが分かる程乱暴に書かれた単語がいくつも書かれていた。


『日本』『信楽朱里』『××××年8月9日生まれ』『〇〇県△△市□〇町27番地2』『××××年〇月△日〇〇君と付き合った』『お母さんの名前は△△□』『お父さんの名前は△△〇』


とにかく覚えている事を全て書き出したようで涙の跡も見えた。次のページを捲ると、少し落ち着いてから書いたのかちゃんと文章になっていた。


『前世の記憶だろうか、親が亡くなってから頭痛と共に降り注いだ記憶に泣いて叫んだ。私は1度死んでいる。この世界で1人私は生きていかなきゃいけない。日本とは違う、いつ死んでもおかしくないこの世界で独りだ。私が何をしたっていうんだ。こんな訳の分からない世界で私はどうすれば良いんだ』

『記憶が戻って1ヶ月。ひたすらに働いては稼いだお金で食材を買ってお母さんに教わった料理を作った。忘れたくない。怖い』

『記憶が戻って半年。どうやら1度戻った記憶を忘れる事はなさそうだ。でも怖い。この日記は絶対に手放さい。絶対に忘れてたまるか』

『記憶が戻って1年が経った。前世で一緒に過ごした皆はどうしているのだろうか。私が死んだのは恐らく19歳のあの時。デートで待ち合わせをしていた時だろう。あそこから、私には前世の記憶がない』
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