第3章 新しい日々
「しっかし…朱里って本当に胸がなけりゃ実は男なんじゃって思うよな」
「実は作り物かもよ」
「違いねぇ!」
「そんだけしてもガサツさのせいで意味ねぇっていう!」
「人が離れてる間に何を話してるのかな」
「っ!?」
「ひぃ!」
ローと食料を買い込んでいる間、別の店で用事を済ませているベポ。ペンギンとシャチは道端のベンチで雑談をしていた。最初は記憶がなくなってもやっぱり朱里は朱里だなという話だったようだが、いつの間にか話は朱里が実は男ではないのかという話になっていた。その瞬間を聞いた朱里の怒りはペンギンとシャチが朱里の顔を見れない程であった。
「安心しろ、2人とも」
「きゃ、キャプテン…」
「助けてくれんですか!?」
「こいつの女らしい姿は俺だけが見れたらそれで良い」
「唐突にどうした!?」
「キャプテン!?」
「ご乱心!?」
楽しそうに笑いながら朱里を後ろから抱き締めるロー。それなりの身長差があるのにわざわざ腰を曲げてまで何のアピールなのかと朱里は眉を顰める。ペンギンとシャチはというと、朱里が記憶障害を起こしてからそんな素振りは見せなかったというのに何が起きたのかと逆に心配になってきた。
「おい、朱里」
「え、何?」
「お前の感性からして、これは浮気か?」
「え…?えぇーと…ローからしたら、自分との記憶がないだけで好きになった女と何も変わらないんだっけ…んー…まぁ、映画や漫画で良くある話だと美談だよね…。そういう事も考えたら…浮気じゃ、ないのかな?」
「なら大丈夫だ」
「待って、まず私の気持ちは!?」
朱里の回答を聞き、意地悪そうに笑いながら朱里の頬にキスをしようとして朱里が全力でそれを止める。ローは負けずとキスをしようとしてそれをペンギンとシャチが途方に暮れつつ見ていた。
「前から思ってたけど、朱里がキャプテンと付き合っても人前では絶対にいちゃつかねぇじゃん?」
「本当に付き合ってたのか謎なレベルだったよな」
「そんな事どうでもいいからこの馬鹿止めてくれない!?」
いくらなんでも男と女の力の差もあり徐々に根負けしそうな状況で、呑気な2人を前に朱里は困り果てるしかなかった。