第2章 新しい世界
あれからどれぐらい経ったのか、ふと目を開ける朱里。いつの間にか寝てしまったいたのかと身体を起こすと、部屋の中にはロー、ペンギン、シャチ、ベポがいた。ローがベッドの横で寝ており、その足元でベポが蹲っていた。机にもたれかかるように寝ているペンギンに、扉の前で体育座りで寝ているシャチ。
その光景を見て、泣きそうだった。一人っ子だけど、いつでも家に帰れば母親がいた。登下校も友人がいて、本当の意味で1人になる事は少なくて、1人で買い物が苦手だった。そんな自分なら、確かに1人のままずっといるのは苦痛だろう。だから、皆来たんだろう。
「…でも、私じゃないんだ…」
きっとこの世界の朱里を心配している。この世界の朱里が自分と同じ性格なら、寂しがるんだろう。だからなんだ。自分への心配じゃない。
「っ、…ふ…」
こんなにも傍にいてくれているのに、独りだとしか思えない。それがこんなにも怖くて寂しいものなのかと、朱里は声を殺して泣いた。こんな悩みを言えばもっと皆を困らせるだろう。どうすればいいのかと涙を流していると、ふと人の動く気配がする。気配がした方を見れば、ローが顔を上げていた。
「…泣いてるのか」
「…だから、何…」
「お前の泣き顔は、見たくねぇ」
「私のじゃない…朱里の、でしょ」
「………お前は朱里だろ?」
「この世界の朱里じゃない」
「…言いたい事は、よく分かんねぇ。でも…俺の好きな朱里とお前の違いは、俺との記憶があるかどうかじゃねぇのか?そんなにも、お前の言うこの世界の朱里との違いを探してどうしたいんだ…」
いつの間にかローに頭を撫でられている朱里。違いを探してどうしたいのか?それは…。
「…それは…」
「…お前の、その…別の世界での記憶…もしかしたら、別の世界で生まれた時の朱里の記憶かもな」
「………ごめん、どういう事」
「ふっ…だから、お前はお前だって事だよ。別世界の朱里の記憶がたまたまこっちの世界に来ただけで…ただ、記憶が違うだけで…朱里はここにいるんだ」
朱里には説明されてもよく分からなかった。ただ自分の記憶を否定されずその上で自分を見てくれているのなら、それでいいかと目を閉じた。