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私の世界

第2章 新しい世界




朱里の家のレシピは、特に何かが変わっているという訳では無い。ただ、手を抜ける所は抜いてしまえと普通の手順とは違っている部分が多々ある。そうすると多少の味は変わってしまうのだが、朱里は雑味のある母の味が好きだった。母親が料理を作ってるところを見ては必死にレシピを書き溜めた。


「曖昧な所もあるけど…お母さんが作ってたご飯だ…」
「…つまり…お前の言う、この世界の朱里も、お前も…同じ飯を作ってたのか。道理で同じ味な訳だ…」


どういう事なのだろうか。それは、鍵のついた日記帳を見れば分かるのだろうか?この世界の朱里との違いを見つけたいのに、皆と話せば話す程、違いを探せば探す程に朱里の日本で過ごした記憶は作り物なのではないのかと。本当に、記憶障害で自分が変になったのではないかと。


「…この鍵なら、多分俺が持ってるやつだ」


日記帳を持ち、鍵穴を見つめていたローがふとそう言う。やっぱり考え方も一緒なのだろうか。やはり同一人物なのか。そんな考えにもうどうすれば良いのか分からなくなっていく朱里。


「………どうせ、俺が持ってるならお前はこの日記帳は見れない。なら、もう考えなきゃ良いだろ」
「…そんな、簡単な事じゃない…」


この1週間だけでも悩まされてきた事。自分が誰なのかも分からなくなり、自分のこの記憶はただの障害で作られた架空の物ではないのかと。元の世界での家族も友人も恋心も、自分がこうして生きようと思ってきた人との関わり全てが無かったかもしれない恐怖。


「貴方達からすれば嬉しいだろうね!私が今おかしくなってるだけで、貴方達が求めてる朱里がいる証拠ばかり!じゃあ私は!?私は一体誰なの!?私の中の思い出は一体なんだって言うの!っ、私は…記憶障害なんかじゃない…私は、私が生きてきた記憶を障害だなんて、誰にも言わせない!」


いつの間にか涙が溢れていく中、朱里はまとまらない考えをただ吐き出していた。自分自身でどうしていいかも分からず、八つ当たりのように怒鳴った言葉にまた自己嫌悪が湧いてきて、それでも自分を、朱里を求めてくれる人はこの世界にいないのだと嘆いて悔しんで苛立つしかなかった。
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