第2章 新しい世界
「私が、隠すなら…」
そう考えてまた嫌な気分に陥る。考えないように前を向くようにとしているのにこうしてふとこの世界の朱里と自分を重ねてしまう。ロー達の前では徹底して気をつけているものの、1人になると自己嫌悪に陥る程であった。
「…いやもう、とりあえず…開き直ろう。この中が気になって仕方ない」
そしてもう一度考える。考えて考えて、ふと思いつく。
「…台所かローの部屋だな…」
そう思って台所へ行くと丁度洗い物が終わったらしいペンギンがいた。再び戻ってきた朱里に対してペンギンは不思議そうに見てくる。声をかけようかどうかと台所内をウロウロとしているペンギンを放置して、朱里はあちこちを開け出した。それらしいものはないかと漁っていると、ペンギンが慌てて止めてきた。
「おい待て朱里!…捜し物なら手伝うから、荒らすな」
「荒らしてないよ!失礼な!」
「まだ棚2個しか開けてないのにこれで荒らしてないはないだろ」
そう言われて朱里が開けた棚を見れば、どうやって荒らしたのかと言いたくなる程であった。まず戸棚の扉が閉まらない状態になっているとはどういう事なのかとペンギンは呆れた顔をしている。
「…て、手伝って…」
「ったく…飯作った後は綺麗にしてんのに、部屋とか収納ってなったら汚いよなぁ…」
いつになったらちゃんと整理整頓出来んだよ、と言ってからペンギンは自分の言った事を後悔した。言われた本人はと言うといつも友人から言われてるのと同じように、分かってるんだけどね…と返した。返して、ペンギンの反応に疑問を持ってペンギンを見て気付いたのだ。
「…私、貴方達の知ってる朱里じゃないよ」
「あぁ…ごめんな」
そこから無言で2人は黙々と探していた。ただでさえ気まずい雰囲気が更に気まずくなりそうだったので何も言えないまま。
ペンギン達の中では朱里は自分達との思い出がないだけで朱里のままだと思っている。朱里はそれを嫌がっている様子だった。だからこそ、ペンギンはこれ以上朱里に嫌な思いをさせれば朱里が可哀想だという事と、何よりもやっと実った恋がこれ以上発展しないどころか知り合いに戻ったキャプテンことローを思うと地雷を踏むのはやめようと思っていた。