第1章 ここは私の世界じゃない
「イライラして八つ当たりしときながら八つ当たりするまでの内容がどうあれ八つ当たりした自分に更にイライラするとか…本当に、性格は変わってないな」
ニヤニヤと意地の悪そうな笑顔と共に言われた言葉に朱里は今度は八つ当たりではなくローへとハッキリとした怒りを感じた。思わず足でどうにかダメージを与えようとすると、わざわざ片手で拘束されていた意味を知った。空いている片手はあっさりと足を掴んでいた。
「…変わってないなら…」
足を掴んでいる手の力の入り方が変わり、何故か身の危険を感じる朱里。これは良くない気がすると思って身を捩ろうとすればあっという間に押し倒されていた。
「え、いやいや、どういうつもり!?」
「敬語が抜けてきたな。新鮮なのもいいが…やっぱりこっちだな」
「ちょ、まっ…!やめて!変態!痴漢!」
特にそれ以上の何かをされたかと言えば、耳元でこっちだなと囁かれた程度だったのだが。それでも朱里からすれば言い様のない不安等に襲われてパニックになるしかなかった。そんな朱里の様子を見てローは堪えきれないと言ったように笑い始めた。
「ハハッ、お前…本当に、朱里だな」
そうして、ローはあっさりと朱里から離れて近くの椅子に座った。
「どうだ。大声出してスッキリしたか」
そう問い掛けられて、朱里は先程まで自分が悩んでいた事に対してのモヤモヤがなくなっているのに気付いた。
「っー…!」
肯定するのは悔しく、かと言って嘘は吐きたくない。そんな考えから朱里が選んだのは何も言わずにそっぽを向く事だった。
「っ、ん…ぐ…」
どうやらそれがツボにハマったらしくローは吹き出しかけて、笑いを堪えようと必死に口を抑えている。その姿に無性にイライラしたが、朱里はここでムキになっては無視をした意味が無いと耐えていた。耐えてはいるが我慢出来ない怒りが顔に現れているのか、そっと朱里を見たローは身体を震わせて必死に笑いを堪えようと頑張っていた。
「…そろそろ我慢しないで殴る」
その言葉がトドメのようで、ローは堪えきれずに吹き出してしまった。