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私の世界

第1章 ここは私の世界じゃない




あの後、ベポはそろそろ戻らないといけないと言って部屋を出た。朱里は食事を食べようといざ見てみるとトレイの上にはパンとシチュー、牛乳があった。シチューの中には大根が入っていて、友人達から朱里の家は変わってるねとからかわれたのを思い出した。


「…何で、入ってるんだろう…」


ボソリと呟いて食べたシチューは、朱里の好みの味だった。ベポから聞いた朱里という人物は、自分と違う点がどこだろうと悩む程に、性格や行動が似ていた。もしかして、本当に記憶喪失で、何か変な記憶でも混じっているのだろうか。でも、そうなるとローの知り得ない学校等の単語は何なのだろうか。


「………ここは、どこなの…」


段々と食欲がなくなり、食べるのを止めて朱里は本を手に取った。どうやら歴史学書らしいそれは、中々に分厚い本であった。


「こっちはやめよう」


素直に諦めて別の本を手に取ると、先程よりはマシに見えるがそれでも難しそうな本だった。


「…でも、読めるって言ってたよね…」


言っていた通りに、難しい言葉はいくつかあるものの理解出来ない内容ではなかった。そして理解した内容から分かるのは、ここは朱里の記憶にある世界とは違うという事だった。
本を読むのをやめて布団に潜り、自分の記憶やベポが話した事にロー達の自分への態度を考えては泣きそうになって涙を堪えてこれが夢である事を祈った。


いつの間にか寝ていた朱里が目を開けた時、木造の天井が目に映り朱里はとうとう我慢が出来なくなり涙を流した。どうして自分がこんな目に遭わなくてはいけないのか。どうすれば元の世界に戻れるのか。そもそも自分は誰なのか。元の世界は本当にあったのか。自分の記憶をこんなにも怖いと思った事等ないのに、何故こんな恐怖に襲われなければいけないのか。どれ程泣いたのか、ふとノックの音が聞こえる。慌てて布団に潜り寝たフリをしていると再度ノックの音が聞こえてくる。無視を続けていると扉の開く音が聞こえてきて、朱里は思わず身体を大きく震わせてしまう。自分に近付いてくる足音への恐怖が、どういう感情からくるのかも分からないまま朱里は自身の身体を抱き締めるように縮こまった。


「朱里」


聞こえて来た声はとても優しかった。
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