第3章 面影のない君
楽しかった思い出と、水嫌いになった原因の記憶。
「………っ」
それから思い出す…ハルくんの傷ついた表情。
気分転換に来たつもりが、逆効果になってしまうとは…。
「…はぁ。帰ろう…」
このままここに居ても気持ちは和らがないだろう、と再び足を踏み出そうとした時、奥から聞こえてくる音に体がビクリと反応した。
こちらに向かってくる一定のリズム音は、紛れもない誰かの足音。
工事関係者の人か、スイミングクラブの関係者か…どちらにしろ見つかれば怒られてしまうのは間違いない。
何処かに隠れる場所はないかと焦りながら足を動かした時、そばにあったベンチの脚に爪先が引っかかってしまった。
あっ…!!