第3章 面影のない君
ガ、シャンッ…!!
やばいと思う前にはバランスを崩し、その場に尻餅をついてしまった私は強打した腰を押さえながら視線を上げた。
足音を立てる人物はもうすぐそこまで迫っており、逃げ場はない。
怒られるのを覚悟した上で、その人物をじっと見つめる。
相手はこちらに気づいているのか居ないのか…、一定のリズムを刻む足音は変わらないままだ。
ゆっくりと窓の隙間から入る外の光に、その人物の姿が浮き上がってくる。
ーーードクンッ。
心臓が嫌な音を立てる。
スニーカーにジャージ姿、帽子の上からフードを被りイヤホンをしている人物…。
それはどう見ても工事関係者やスイミングクラブの関係者ではない…。
微かに見える赤髪…。
「……え」
相手の姿が見えた時、私の心臓がざわめいた。