第3章 面影のない君
「……あれ?こんなのあったんだ」
もうすっかり廃れてしまった建物の壁にはイルカの絵や、水泳帽を被った子供の絵などが書かれている。
どうやらスイミングクラブのようだ。
異様な雰囲気を放っている廃墟に、恐怖と少しの興味が心の中を入り混じる。
…でも入れる所なんてないよね。
体をズラしながら正面玄関を確認していくが、やはり鍵はしっかりかけられ…。
「……ん?」
ぴたっと体の動きと視線が止まる。
正面玄関から少し離れた所にある、従業員専用の扉の様なもの。
そこが微かに開いている。
鍵が壊れてたのかな…。
ゆっくりと近づいてドアノブに手を伸ばす。
少し埃っぽいドアノブを捻ると、ギッ…と錆びた音と共にゆっくりとそこが開いた。