第3章 面影のない君
「………」
それからどれだけの時間が経ったのだろうか。
いつの間にか風は少し冷たくなり、空は茜色に染まって来ていた。
もうすぐ下校時間になる。
運動場で部活を行っている生徒達も片付けの作業に入り、ちらりとズラした視線の先にある水泳部も運動後のストレッチを行っていた。
私がいてもいなくても、賑やかそうな水泳部。
少し胸が締め付けられるような痛みを感じたが、私はそれを無視して視線をズラした。
素直に家に帰る気にならなかった私は屋上を後にすると、水泳部に会わないように気をつけて裏門から外に出た。
茜色に染まる道を気の向くまま歩いていく。
いつもは通らない道を通ると、私の中の探究心が湧き上がり足取りが軽くなる。
時折、人懐こい野良猫とじゃれあいつつ進んだ先に見つけたのは、古びた一つの建物だった。