第3章 面影のない君
「ハルくんなんか大っ嫌い!!!」
それだけを言い残し、私はハルくんの制止を振り切ってプールサイドを飛び出した。
完全なる八つ当たり。
助けてもらったのにお礼も言わず、当たり散らして最悪だ…。
後悔、申し訳なさ、いろんな感情が渦を巻き、涙は止まることを知らない。
身動きの取りにくいまま必死に足を動かして走る私を見つめる、生徒の訝しげな視線が突き刺さる。
最後に見たハルくんの傷ついたような表情がいつまでも脳裏に焼き付いて離れない。
その日は自分がどうやって家に帰り着いたのかよく覚えてない。
ただ、寒くて悲しくて悔しくて…涙が止まらなかった事だけは覚えている。
私はこれをきっかけに水泳部に顔を出すことはなくなったー…。