第3章 面影のない君
「……ふざけるな」
「…え…?」
背後から怒気を含んだ声が聞こえ、ゆっくりとそちらを振り返ると、同じく水でぐっしょりと濡れたハルくんが私を睨みつけていた。
「もし俺が来なかったら、どうなってたか分かっているのか?水が嫌いならプールに入るなっ!」
「……っ…」
いつも感情をそんなに出さないハルくんが完全に怒っている。
私を睨むハルくんの瞳をまっすぐと見つめ返すことが出来ずに、目を逸らす。
「…………」
ハルくんはそれ以上何も言わなかったが、雰囲気でまだ怒っていることは容易に分かった。
制服のままのハルくんの姿から、慌てて私を助けてくれたことはよく分かる…。
…………でも。