第3章 面影のない君
呆然と瞬きをしながら、自分が今置かれている状況を理解しようにも、頭が上手く回らない。
「大丈夫か?」
背後から聞こえる声はハルくんだと言う事、見える景色、呼吸が出来る事を確認し、自分がプールサイドにいることをやっとの事で理解した。
「……私…確か…プールに落ちて…」
背中を上下にさすってくれているハルくんの温もりを感じながら、記憶を呼び起こす。
ぐっしょりと濡れた制服が肌に張り付き、髪から落ちる水滴が私の頬を伝って流れる。
「ハルくんが…助けてくれたの……?」
「………」
あのまま誰にも見つけられなかったら、私はきっとー…。
そこまで考えてようやく恐怖が湧き上がり、悪寒が走った自分の体をぎゅっと抱きしめた。