第3章 面影のない君
……冷たい。
……寒い。
風が濡れた体から体温を奪っていく。
「………っ、…!」
誰……?
微かに聞こえる誰かの声に反応しようにも、体が重く動かない。
ピクリと小さく跳ねる指先もすぐに力が抜けてしまう。
私、どうなったんだろう。
「……おいっ!」
大きな声と共に頬を叩かれる痛み。
それは徐々に強く、痛みを増し、私の意識もだんだんと浮上していく。
「……由真っ!!」
……っ?!
「げほっ…!」
名前を呼ばれたと同時に強い吐き気が催し、私は先程まで動かなかった体で反射的に口を抑えむせ返った。
「っ、ごほっ!…うえっ……」
ポタポタと口から水が吐き出される。
…………私。