第3章 面影のない君
ザ、ブンッ……!!
冷たいプールの水に体が深く沈んでいく。
水泳部員と出会ったあの時と同じ様に、制服が水を吸い、重く身動きが取りにくくなる。
「…っ、…!」
がぼっと口から生まれた空気の泡が溢れて弾ける。
不思議と苦しいと感じるものの、焦りや恐怖は私の中には無かった。
運命を受け入れる、と言う言葉とはまた別物かも知れないが言うなればその様なもの…に近いと思う。
だって…私の全てだったんだよ?
水は。
水の中で泳ぐと言う事は。
それくらい大切で…私の生きがいだった。
泳いで、練習して、勝つ喜びを知って、負ける悔しさを体験して…もっと強く、強くー…。
水の中で泳ぐ楽しみを失ってから、私の世界は色を失った。