第3章 面影のない君
心臓がドクンッドクンッと脈を打つ。
水の中にある自分の指先が細かく震えている。
「………っ…」
ぐっと目を閉じて視界をシャットアウトしているからか、心臓の音が酷く大きく聞こえる。
怖くないと何度も自分に暗示をかけながら、ゆっくりと震える瞼を開ける。
反射する太陽の光が目に刺激を与えたのは一瞬で、すぐに水面に映る自分の怯えた顔が視界に入った。
「………っ!」
“嫌だっ…!!”
そう思ってしまった瞬間、私と水の間に亀裂が入り、それはすぐに脆く崩れ去る。
受け入れることが出来なかった私に、水は牙を向く。
容赦なく…襲いかかってくるー…。
「……あっ」
そう感じた時にはもう、全てが遅かったー…。