第1章 水泳部と少女
抱きついたままで離れない黄色い頭…いや、渚くんに悪戦苦闘する怜くん。
…それより…。
「ひっ、くしゅっ!」
寒いと思う前にはくしゃみが出て、優しそうな男の子が慌てて私を見る。
「ごめん!すぐ着替え用意するから!」
「真琴」
「あ、ハル…」
ぐっしょりと濡れたままの私の制服を見て踵を返そうとした肩を掴んで、ハルくんが現れた。
「渚が悪かったな」
そう言って私に差し出してきたのは、ハルくんの物だと思われるジャージだった。
「…ありがとう」
「ん…」
着替えを持ってなかった私はありがたくそのジャージを受け取った。
「良かったら、更衣室で着替えて?」
「うん」
真琴くんに案内されて広い更衣室に入った私は、肌に張り付く制服に苦戦しながらもジャージに着替えたのだった。