第1章 水泳部と少女
「…ビックリさせちゃって、ごめんね?」
ふわふわの髪の下から覗く大きな瞳。
「………」
わざとじゃない。
それは分かってる。
…でも。
手の震えはまだ、収まってない。
無言で顔を背けた私にあからさまにショックを受けたその子に、罪悪感がチクリと胸を刺した。
「水…飲んだのか?」
手で口を押さえた私を見て、顔をのぞき込んできたハルくん。
「…っ」
水着姿のハルくんは思わず目を背けて俯いた私の頭をぽんと撫でると、そのまま更衣室に歩いて行ってしまった。
さっきまで…あの腕の中に…っ。
思わずかっと頬に熱が集中して、私は慌ててバスタオルで顔を隠した。
「…一体何の騒ぎですか?」
その時、もう一人の水泳部と思われるメガネの子がプール内に入ってきた。
「怜ちゃぁあんー!!」
「なっ、渚くんっ?!」
さっきまでうるうると目を潤ませていた黄色い頭はぎゅーっと怜と呼ばれた男の子に抱きついた。