第3章 面影のない君
「……っくしゅ!」
盛大なくしゃみに息を深く吐き、鼻をすん、と鳴らしながら屋上で寝たのがいけなかったのかと考える。
あの後私は屋上で寝たり起きたりを繰り返し、1日の授業を終えた。
つまりは今日の授業をすべてサボった訳になる。
いくら暖かくなったと言っても、日陰でしかも風がよく吹く屋上で何時間も寝るのは体に悪い。
まだ誰も来ていないプールサイドで私はそんな事を考えていた。
いつもうるさい渚くんが居ないプールサイドは静かで心地よい。
ここにプールが無ければ尚更。
「…プールが無かったらプールサイドじゃなくなるんだけどね、ここ…」
水を克服しようと奮闘していた日々も無かった訳ではない。
最初の内は自分が水恐怖症になったのを信じられないくらいだった。