第3章 面影のない君
月日が流れるのは早いと言うけれど、実際貴方と分かれてからの数年間…私の時間はとてもゆっくりだったように感じる。
退屈な毎日を過ごしていた。
自分の膝を抱えたまま瞳を瞑れば、まぶたの奥にはすぐにあの笑顔が浮かぶ。
…気持ちは数年前のあの忌まわしプールの中に沈めてきた。
なのに…。
掻き乱される。
昔を思い出す。
やっぱり水泳部とは関わるべきでは無かった。
そう思ってももう遅いことは、自分でもよく分かっている。
…ああ、だいぶ暖かくなったな。
体の力を抜いて地面に四肢を投げ出す。
仰向けになった私に眩しい太陽の光が降り注ぎ、直接瞳を刺激する。
春爛漫。
そして夏が来る。
私の嫌いな、夏が来るー…。