第3章 面影のない君
教室に行くと言ったものの、真っ直ぐクラスに戻る気にもなれず、私は誰もいない屋上で1人空を見上げていた。
プールサイドで見上げた時よりも少し近い空。
こうして私はまた実感する。
もう昔のように水の中を自由に泳ぐ事も、水の冷たさを気持ちいいと思うこともないのだ…と。
そう考えると胸の辺りが重く、鈍い痛みが突き刺さる。
「………会いたいよ…」
会いたい。
きっと貴方は昔と変わらないあの笑顔で、私の憂鬱な思いなど吹き飛ばしてしまうんだろう。
そうすれば…私はまた、水に触れることが出来るのだろうか。
地面に視線を落とし、蹲る。
冷たい風が私の髪を空中に舞い上がらせる。
私がもう泳げないことを知れば、貴方は悲しんで…自分のせいだと思ってしまうかもしれない。
だから私はー…。
貴方の前から姿を消した。