第3章 面影のない君
少し涙で視界が歪んでしまっている。
それを気づかれたくなくて、私は2人から視線を逸らして地面を見つめた。
水が零れた部分の地面は色が濃くなっている。
…情けない。
こんなことで水の克服なんて出来るのだろうか。
そんな疑問が心の中に浮かんだ時、制服を着た真琴くんがプールサイドに顔を出した。
「もー…ハル。家にいないと思ったらここにいたんだね」
プールの中で優雅に泳ぐハルくんの姿を見つけた真琴くんはほっと息を吐くと、私と渚くん達を見てぱちくりと目を見開いた。
「渚も怜も何してるの?」
「由真ちゃんの水の克服練習しようと思って」
でも…と続ける渚くんに何かを感じただろう真琴くんは、パイプ椅子に座ったままの私に近づき頭にぽんっと手を優しく置く。
「ちゃんと練習してたんだね」
えらいえらいと言葉を続ける真琴くんの腕を払う。
「子供扱いしないで」
そう睨んでも真琴くんは笑みを浮かべるだけだった。