第3章 面影のない君
フェンスに体を預け、青い空を眺める。
時折聞こえる水を弾く音と、小さな小鳥のさえずり。
水の克服練習など憂鬱なものがなければ、穏やかで心地いい時間なのだが…と心の中でため息を吐く。
「由真ちゃーん!」
ほら、来たよ…。
もう一度心の中でため息を吐いて空から視線を動かすと、どこか誇らしげな渚くんがニコニコと笑みを浮かべていた。
そしてその後ろに見えるのは…子供用のプール?
首を傾げる私の手首を掴んだ渚くんは、子供用のプールの近くまで行くとこちらを振り向いた。
「まずはこのプールで水に慣れてみよう?」
……は?
ちゃぷんっと子供用のプールに張られた水が音を立てる。
自分の眉間にシワが寄るのを感じながら、私はその小さなプールを眺めていた。