第1章 水泳部と少女
伸ばした私の指先が、誰かの指先と絡むと強い力で水面まで引き上げられた。
一気に外の光が近くなったと思った次の瞬間には、私の顔は水の中から引き上げられた。
「っ、げほっ!げほっ!」
「大丈夫か?」
いきなり大量の空気が肺に入り、むせ返る私の頬をペチペチと叩く黒髪の男の子。
私より背の高いその人の髪から落ちる雫が、すでにびしょ濡れな頬を濡らしていく。
「2人とも大丈夫?!」
「ハル、早く上がって!」
少し潤んだ瞳でプールサイドから身を乗り出してくるふわふわ頭と、バスタオルを持っている優しそうな男子。
ハルと呼ばれたその人は、私を抱いたままスイスイと水の中を歩く。
「大丈夫?掴まって!」
優しそうな男の子が差し伸べて来た手を掴むと、ぐいっと引っ張り上げられ、そのままぽすっと胸にダイブする。
っ、濡れちゃう!
慌てて体を引いた私をガシッと掴んで、優しくタオルをかけてくれる。
「ごめん、寒かったよね?」
「…ん、平気」
微かに震える手を握って、それを隠す。
ぽんぽんとタオルで私の体を拭いてくれるその手に身を任していると、おずおずと言った様子で隣から黄色い頭が顔を出した。