第3章 面影のない君
真正面に抱きついてきた渚くんの体を引き剥がして、私は距離をとる。
「何っ?!いきなり抱きつかないでよっ!」
いつか言おうと思っていた事を口にすると、渚くんはお得意のあざとさ全開でぷくーっと頬を膨らませた。
可愛い行動をとれば全てが許されると思うなよ。
じとっと渚くんを睨む。
互いに譲らないままでいる私達に、後ろから遅れてやって来た怜くんが声をかけてきた。
「お二人ともっ…何を、なさっているんですか?」
渚くんを追って来たと思われる怜くんの息はかなり乱れている。
「怜ちゃん遅ーいっ!」
「渚くんがいきなり走りだすからいけないんですよっ!」
理不尽に嫌みを言われた怜くんが反撃するのを横目に、今がチャンスだと足を進める私。
ぐいっ…!
「っ?!」