第3章 面影のない君
「お風呂は大丈夫なの…?」
………はい?
どうして水が嫌いなのか…とか、そんな感じの事を聞かれると思っていた私には予想外の事で、思わずぱちぱちと瞬きをしてしまう。
「あ、…うん。お湯だと平気。…湯船には浸からないけど…」
微かに頬を染めている真琴くんに対し、私は冷静に答えた。
「そっかぁ…えっと、プールはダメなんだよね?」
「…うん。水がたくさんあるのはダメ」
手のひらで掬う程度の水が私に脅威を示すことはないが、それが密集して群れとなし、大きなモノになってしまえば…。
私に為す術はない。
飲み込まれて…酸素が触れない程深くまで落とされ、もがき苦しむ。
手足をバタつかせても体が水面上に上がることはないのだから…。