第3章 面影のない君
……あ、嫌な事思い出した。
ふるりと水の脅威を思い出して震える体を抱きしめた私を見つめる真琴くんの眉が下がる。
「ごめん。…大丈夫?」
なんで真琴くんが謝るの。
「大丈夫…ごめんね」
肩に触れた真琴くんの手をやんわりと拒絶しながら、私は深い息を吐いた。
まだあの時の恐怖は払拭されていない。
だからこの後遺症は残っているのだ…。
「由真ちゃん、水の克服練習は明日からにしようか?」
「…え?」
黙ってしまった私を思ってか、そう提案してきた真琴くんに小さく頷いて答える。
…克服出来るか分からないけど。
ゆらゆらと風に揺れるプールの水はまるで私を受け入れる気がないように、そこだけ影が落ちているように見えた。