第1章 水泳部と少女
水を吸った制服が重くまとわりついて、体が底に吸い込まれていく感覚。
「え…上がって、こない…?」
「まさか泳げないのかっ?!」
「っ、!」
「「ハル(ちゃん)?!」」
…怖い。
まるで底が見えない深い海のよう。
圧迫されて私の体は何度も酸素を求めて口を開くが、入ってくるのは水ばかり。
あの時の恐怖を思い出して体が強張って…。
死ぬのかな…。
このまま、死ぬ?
薄っすら目を開くと、外の光が遠く見える。
水の中は、光も音も届かない。
伸ばした手の先を掴むように伸びてくる、私とは違うもう一つの腕。
それは光の中から…。
……人魚?
キラキラと反射する黒髪に、青く澄んだ瞳。