第3章 面影のない君
「だーいじょうぶっ!」
ドンっと背中に走った衝撃と共にぎゅっと体を抱きしめられる感覚。
後ろに視線を動かすと、肩にバスタオルを羽織った渚くんがいた。
「…何が大丈夫なの?」
ひっつく渚くんを引き剥がしながらそう尋ねると、ちぇーっと口を尖らせた彼が口を開く。
「僕達が近くにいれば溺れたりしないし、何か起こることもないよ!…ねー?怜ちゃん」
「えっ、何の話ですか?」
ざばっと水から顔を出した怜くんはいきなり話を振られて戸惑っているが、渚くんはそれ以上は何も言わずにこちらに話を戻した。
「由真ちゃんのおかげで水泳部が出来たんだから、それくらいは協力するよっ!」
「…水泳の授業も近いしね。どうかな?」
人懐こい笑顔を浮かべる渚くんと、あくまでこちらの意見を尊重するように尋ねてくる真琴くん。