第3章 面影のない君
あれからどうやって水泳の授業から逃れるかを考えたが、いい案は全く浮かばなかった。
親が医者だったら、診断書が貰えたんだけど…。
黙り込んだ私を見て、真琴くんは何かを考える素振りを見せた後に口を開いた。
「ここで水を克服する練習をしてみたらどうかな?」
「…は?」
素っ頓狂な声を出してしまい慌てて口を閉じて真琴くんを見つめる。
確かに克服するには最適な場所だと思う。
目の前にプールはあるし、もし溺れても助けてくれる人がいる。
……でも。
あの時の感覚を思い出して、ごくりと喉が上下に動く。
もう近づきたくない。
まだ近づけない。
だって、見るだけでも嫌なのに。
…克服なんて出来る訳がない。