第3章 面影のない君
「はぁー…」
「由真ちゃん、どうかした?」
ドリンクを抱えたまま、思わず零れたため息にいち早く気がついた真琴くんが私のそばにくる。
彼は人の事をよく見ていると思う。
「いや…もうすぐ水泳の授業だなって…」
そっぽを向きながらボソッと呟いた私を見て、ああ…と苦笑いを浮かべた真琴くんは何を思ったのだろうか。
水が好きな人…例えばハルくんとかは、その授業が待ち遠しいかもしれないが…。
プカプカと仰向けで優雅に水の上に浮かんでいるハルくんに一瞬視線を送ってから逸らす。
私には苦痛の授業でしかない。