第2章 マネージャー
「うまい鯖を食わせてやる」
……………。
それは全く想像していなかった言葉。
さば…?
この人今さばって言った…?
でもその言葉は、私の心を揺れ動かすには十分だった。
「………ふっ」
耐えきれなくなった笑みが口から零れる。
そのままお腹を抱えるようにして笑い出した私を見て、ハルくんはむっと眉にシワを寄せた。
さっきの言葉を発した時の、ハルくんのドヤ顔を思い出して、また私の口からは笑いが零れる。
「はははっ。…ふふっ」
「…笑いすぎだ」
機嫌が悪くなったハルくんにごめんとだけ返して、私は長く息を吐いた。
「…っはー。降参。…いいよ、マネージャーになってあげる」
私の答えを聞いた瞬間に、ハルくんの顔がぱあっと明るくなったのを私は見逃さなかった。
真琴くんや渚くん、怜くんの歓喜の声も聞こえる。
ああ…本当に、こうなれば私も覚悟を決めないと。
水嫌いな私が水泳部のマネージャーになった今日。
これは神様が決めた必然と言うものだったのかもしれないと、私はあとあと思うことになるのだ。