第2章 マネージャー
「渚ー、怜ーどうし…あ」
向こうから歩いてきた真琴くんが、渚くんの影に隠れていた私を見つけて目を見開いた。
「……帰る」
なんとなく気まずい。
そんな空気を感じた私はくるりと方向転換をして歩き出す。
「あっ、ちょっと待って!」
呼び止められた真琴くんの声に反射的に足を止めて後ろを振り返った。
「…っ、えっと…見学…していかない?」
じっと見つめると何故か動揺した真琴くんがそう誘ってきた。
水泳部に入る気はさらさらないのに、見学をする気にはなれなかったが…。
「………」
捨てられた子犬のようにこちらを見つめてくる真琴くんと、同じく目を潤ませて見つめてくる渚くんを無下に出来なかった。
「…ちょっとだけなら…」
私の言葉を聞いた途端にぱっと目を輝かせる真琴くんを見て、この人の無意識のこーいうとこは苦手だと心の中で呟く。
早く早くっと急かす渚くんに私は覚悟を決めると足を踏み出した。