第1章 水泳部と少女
私がわざわざこの高校を選んだのは夏にプールが無いからだ。
…確か同じ学年の誰かが水泳部を作る条件として、プールの修繕を行ったらしい。
水に入りたければ水泳クラブにでも行けばいいのに。
何の為にここに入学したと思ってんの。
おかげで今年からプール授業が導入されてしまった。
「…呪ってやる」
水は嫌いだ。
人間はそもそも水に対応出来ないんだから、わざわざ水に浸からなくてもいいと思う。
…苦しいだけだし。
恨めしく睨む私の目の前で相変わらずキラキラと揺れる水面(みなも)。
膝を抱えたままでじっとその様子を見つめる。
「…どうやったらプールの授業サボれるかな」
さすがに全部の授業をサボったら単位が取れなくなってしまう。
それは困るし、だからと言って病院に行っても診断書なんて貰える訳が無い。
…病気とかじゃなくて、単に水が大嫌いなだけだからな。
中学はプールが無い所を選んだので問題はなかった。