第1章 水泳部と少女
「…眠い」
ふわっとあくびをした私はとことこと中庭を歩いていた。
ピンクの花びらをまとっていた木から桜が舞い、地面にひらひらと落ちていく。
春が終われば夏がくる。
今は6時間目の授業中とあって、私以外の人の姿は…当たり前だがない。
飲み物片手に歩いていると、視界の端にプールを捉えた。
「………」
目指す場所を変えてプールへと一直線を歩いていく私の頬を、ふわりと風が撫でる。
徐々に近くなっていくプール。
鍵はかかっていなかったので、遠慮無く中に入っていく。
更衣室とシャワーの先にある25mプール。
「…ちっ」
忌々しいプールめ。
空の青を写して、太陽にキラキラと反射するプールいっぱいに張られた水を睨みつけながら、私はそばにしゃがみ込んだ。