第1章 水泳部と少女
結局2人に送られて私は駅まで来ていた。
もう外は真っ暗で、開放的な駅をすり抜けていく風は冷たい。
…ってか。
「……あの、もう帰ってもいいよ?」
何故かまだ隣にいる2人に声をかける。
「えっ、だってまだ電車が来るまで時間あるよ?」
電車が来るまで一緒にいるつもりなのか真琴くんは。
本当この人は優し過ぎやしないかと心配になった私を余所にハルくんはくあっとあくびをこぼす。
「ほらっ!ハルくんも眠そうだしねっ?」
「眠くない」
だから帰っても大丈夫だよ、と私が言葉を続ける前に即座に否定をしたハルくんにええーっと顔が引きつる。
せっかく帰ってもらえると思った口実を否定されてしまってはもうどうしようもない。
しょうがなく口を閉じた私はそっと地面に視線を落とした。