第1章 水泳部と少女
しょうがなく、じっと待っているとバタバタとこちらに走ってくる足音がすぐに聞こえてきた。
「っ、ごめん!待たせちゃったかな?」
「…いや…」
2、3分も待ってないのに、真琴くんはごめんとまた謝ってから私にカフェオレを差し出した。
「えっと、何がいいか分からなくて…前、渚に貰ったカフェオレ飲んでたから…」
どうしてそう…。
遠慮がちに差し出されたそれを受け取ると、触れた手のひらから温もりが伝わってくる。
あったかい。
ぎゅっと両手でそれを包み込み、ぺたっと頬にくっつけると先程まで寒かった体がじんわりと温まる。
「…ありがとう」
ふにゃっと表情筋が緩んでいるのを自覚しながらお礼を言うと、また真琴くんが慌てだした。
「いやっ、…うん!全然っ気にしないで!」
若干顔が赤くなってないか?と思ったが、さっきこのカフェオレを買いに全力疾走したみたいだから、そのせいだろうと私は結論付けた。