第1章 水泳部と少女
パタパタと慌ただしく校内を走る。
“早く取りにいってこい”
…とハルくんに見送られ、私は辿り着いた教室をガラッと開けた。
キチンと並んだ机とイスに、綺麗な黒板。
その間を抜けて自分の机に辿り着いた私は、横にかけてあったカバンとジャージの入った紙袋を持ち上げる。
校内に入る前にハルくんにジャケットを返してきたが、外は寒いだろう。
ついさっきまで水の中に居たのだから。
待たせてしまったお詫びにあったかい飲み物でも買って上げようかと思案しながら歩いていくと、前方から何か物音がして私は立ち止まった。
カタッ…カラカラ…。
扉が閉まるような音。
こんな暗い校内で私以外にも残っている生徒が居たのだろうか。
……不審者?
危機感を抱いた私は足を止め、じっと暗い前方を睨むように見つめる。
足音を響かせて前方から歩いてきたのは…。
「……あれ。まだ残ってたの?」
「っえ。…真琴くん?」
予想もしなかった人物だった。