第1章 水泳部と少女
バサッ!
「うあっ?!」
「…着てろ」
突如視界が何かに遮られ、慌ててそれを手に取り顔を上げると既に着替え終わったハルくんが目の前に立っていた。
「え。…もう着替えたの?」
「別に普通だろ」
何言ってんだお前、と言いたげな目つきで見てくるハルくんにそれ以上は何も言えずに口を閉じる。
だってまだ5分も経ってないよ…?
水泳部ってこんなに早く着替えれるものなの?
首を傾げながらスタスタと歩いていくハルくんの後ろを慌てて付いて行く。
「………」
さっき乱暴に渡された制服のジャケットを見つめ考えた後に肩に羽織る。
一瞬こちらに視線を向けたハルくんにお礼を言ってから、はっと気づいた。
「あっ!!」
「…なんだ?」
顔を歪めたハルくんにあはは、と乾いた笑みを零してから私は口を開いた。
「荷物、教室に置いたままだった…」